僕たちは仕事でミスをすると落ち込むし、自分に能力がないのではないかと自分自身を責めがちである。
人はある仕事に就いてしまうと(ある会社に属すると)、自分の働いている領域が自分の全世界であるように錯覚してしまう。その「世界」の中で自分の力が発揮できないと、自分の能力に自信が持てなくなり、自分は無能な人間だと思い込んでしまう。
会社の論理に埋没して視野狭窄に陥ってしまうのである。
当たり前の話だが、人はそれぞれ得意なこと不得意なことがある。得意なことが活かせる場では自分の力が発揮されやすいし、逆に不得意なことをすると結果は芳しくなくなる可能性が高い。
別に自分の能力が劣っているわけではないのである。
僕たちは仕事を選ぶ際に必ずしも自分に向いているかどうかで判断するわけではない。給料や勤務地、会社が有名かどうかなど職種のみで選ばない場合も多い。もっとざっくりと言うと、肉体労働に向いているのにホワイトカラー的な仕事を選択したり、また逆の場合もある。
実は自分にどんな仕事が向いているか、と判断するのは難しい。実際にやってみないと分からないこともある。事務系・内勤の仕事が向いていると思っていたのにしっくりとこずに、外勤・体を動かす仕事が実は向いていたというケースが結構ある。
また厄介なのは、自分が好きなこと=向いている仕事とは限らないことである。それと得意なこと=好きなこととも限らないこともある。
僕のことを例に出すと、事務系の仕事は得意だし向いていると思うが好きにはなれなかった。人前で話すことは不得意だが、講師の仕事は好きだったし向いていた。今の介護系の仕事は好きだが、どうも向いているとは思えない(細かい気遣いが苦手なのだ)。
なかなか世の中うまくはいかないものである。
僕の経験を照らし合わせた上で言えそうなことは、やはり人には向き不向きがあって、自分の好きなことよりも向いている仕事をするとストレスも少ないし、長続きする傾向があるということだ。
自分の好きなこと=向いていることであったなら、これは一番ハッピーである。でも、実際には僕のようにそうでないこともあって、事はそう単純なものではない。
自分が今している仕事でミスが多かったり、ストレスを感じているならば、一度本当に自分に「向いている」のかを考え直してみた方がよいのかもしれない。実際は自分に向いていない仕事なのに、好きである・得意であると錯覚している可能性もある。
勤めているのが大企業ならば、人事異動によって自分に向いている仕事・部署に出会える可能性がある。ただ、やはり人事異動によってまた不向きな仕事に就かざるを得ないこともありうる。
ならば自分に向いている職種に絞って、転職するかあるいは独立するかという道もあるが、なかなかにリスキーである。
本来の人事の役割は、ある人の適性、つまり向き不向きをしっかり吟味して本人にマッチした仕事に就かせることである。しかし、現実にはそうはなってはおらず、あくまで理想論に過ぎない。
人には向き不向きがあるということが忘れられがちなのが、この社会、あるいは会社社会の現実である。
ひとりひとりの自己防衛策として、自分が何に向いているかを常に自分に問い続けることが大切なことである。