希望の舎―キボウノイエ―

漂泊を続ける民が綴るブログ。ちょっとナナメからの視点で語ります。これからの働き方・中世史・昭和前期の軍の組織論・労働問題・貧困問題・教育問題などに興味があるので、それらの話題が中心になります。

フリーターを続けることはどこに問題があるのか改めて考えてみる件

僕はフリーターが正社員になることによって雇用問題が解決するとは思っていない。

フリーターという働き方を認め、正社員との「身分差」をなくすことが現実的な対処法だと思っている。

 

初出 2014/6/15

 

僕は今はれっきとした中高年フリーターである。

若年フリーターとの違いは「あえて非正規雇用を選んでいる」点である。まあ、若い人たちの中にもあえて非正規雇用を選んでいる人たちもいるが、かなりの割合で望まないが仕方なくフリーターになっている場合が多いという調査結果がある。

 

非正規雇用で働き続けるフリーターの問題点は①収入の低さ、②教育訓練の機会がなくスキルアップやキャリアアップができないという2点が主要なものである。他に有期雇用である点も雇用が不安定となることで大きな問題であったが、いわゆる「5年ルール」が法定化されたことにより改善の方向に向かっている。

 

まずは非正規雇用の労働者と正社員との賃金格差の問題である。

比較的単純な作業で通常正社員が従事しない仕事については賃金の単価が低くてもやむを得ないと思う。ただし、現行の最低賃金の水準が低すぎるので、その底上げは絶対に必要である。

問題は正社員とほぼ同じ仕事をしているのに非正規雇用という理由だけで低賃金に甘んじているというケースである。正社員より非正規雇用の社員の賃金が低いのは当たり前という考え方が日本では支配的だが、他の先進諸国では必ずしもそうではない。ILO憲章やEU憲章では同一価値労働同一賃金がスタンダードである。

たとえパートや非常勤であっても、正社員と同等の仕事をしている場合は、同一価値労働同一賃金を適用すべきである。そのように給与体系や人事管理制度を改めるべき時にきていると思う。一時的に正社員の給料が下がるかもしれないが、今までが貰いすぎだったのである。非根幹的業務に就く正社員と非正規雇用社員との処遇を同等にし、両者の壁を無くすことは長期的に見れば雇用の流動化にも資するし何よりフリーター層の底上げに繋がる。

ただし、両者の給料を全く同じにすることはない。非根幹的業務の正社員でも転勤や異動がある場合には非正規雇用社員より負担が大きい。非正規雇用社員(あるいは限定正社員)の給料は、同職歴(年齢ではない)の正社員の80%~90%程度に設定すれば良いと思う。

このレベルの処遇がフリーターに与えられれば、安定した生活を営むことが可能になる。

 

次に教育訓練の問題である。

系統的なキャリアアップが図れる教育訓練を受けることができるのは、大企業の正社員(総合職採用の)であり、働く者のうちの一部に過ぎない。中堅・中小企業では同じ職務に従事し続けることも多く、当該職務のスキルは上がっているが、キャリアアップができているかは少々疑問が残るところだ。

正社員と同等の職務に就き、それを一定期間続けている非正規雇用社員はスキルが上がっているとの評価を与えるシステムを採用することを考えるべきである。

また、非正規雇用社員のキャリアアップのための教育訓練機関を設置してはどうだろう。地方自治体と地元企業が費用を共同負担して設置する。そこでは、例えば従事者数が多い販売職をはじめとする接客業では、売上管理や少人数集団のマネジメント等を学ぶのである。レベルアップして店長や管理職への道を開けるようにするのである。非正規雇用社員の店長の待遇は前述のように正社員と同等のレベルにしなければならない。このような状態になると、もはや正社員と非正社員の区別は意味のないものになってくる。ただ、転勤や過度の会社へのコミットメントを嫌う人たちにとっては、フリーター店長・フリーター管理職という選択肢はありだと思う。

 

結局はフリーターをはじめとする非正規雇用の人たちの処遇を良質なものにするためには、「同一価値労働同一賃金」や「限定正社員」を社会システムに取り入れ、根付かせることによる方法を採ることが早道のように思われる。これらの方法が万能薬ではないが、現状を打破するには有効なものだと思う。

 

フリーターという働き方を続けていても、安定した生活を営むことができ、安心して働ける社会になれば、この社会を覆っている閉塞感を打破できるのではないか、と僕は思っている。