希望の舎―キボウノイエ―

漂泊を続ける民が綴るブログ。ちょっとナナメからの視点で語ります。これからの働き方・中世史・昭和前期の軍の組織論・労働問題・貧困問題・教育問題などに興味があるので、それらの話題が中心になります。

住宅ローンという超長期の借金をしてまで「消耗品」を買う必要があるのかという件〈改題・再掲〉

この国のほとんどの住宅は資産ではなく、消耗品である。

政府・業界が手を組んで住宅の購入を煽り、社会政策福祉政策としての住宅政策を政府はなおざりにしてきた。

そのツケはすべて庶民が払わなければならない。

初出 2014/1/28

 

真っ当な社会人の条件とは、正社員であること、結婚し子どもがいること、持ち家を所有することなどであると信じられてきた。

今回のエントリでは「持ち家」について、あるいは住宅政策について言及したい。

 

長らく日本人は持ち家志向が強いと言われてきた。住宅ローンを組んでまで家を買うことも当たり前のものになってきた。

政府も持ち家政策を推し進め、重ねて住宅ローン減税策を講じている。

 

果たして長期間のローンを組んでまで持ち家にこだわる必要があるのだろうか。

政府の持ち家優遇政策は正しいのだろうか。

 

ヨーロッパの先進諸国では戸建て、マンションともに築年数が古くなっても価値が下がらない(あるいは上がるときもある)物件が多い。だから資産価値を有し、買う価値がある。

一方日本では安普請の家やマンションが多く、建物自体の資産価値は低い。新築で一旦入居すると中古物件となり、資産価値が下がる。ローンを払い終わった頃には建て替えなければならないという、笑えない状況になることもある。築30年ともなれば戸建てでは建物の価値はゼロになり、辛うじて土地の価値だけが残る。マンションはもっと悲惨で資産価値は購入価格の何十分の一になる。

(これは一般的な物件の話で、高級で造りの良い物件は別である)

 

それに長期のローンを組むと利息がバカにならないということである。35年ローンなんかだと、元金と同額に近い利息を払わなければならない。

住宅ローンは銀行にとってはとてもおいしい金融商品である。

 

多くの先進国では、低中所得者向けの公営住宅や労働者住宅を多く供給する住宅政策を採っている。住宅政策が重要な社会保障制度として考えられているからだ。いわゆるグローバル・スタンダードである。

翻って日本では住宅政策は貧弱で、市場原理に基づいて不動産業者・住宅会社に丸投げした。

社会保障制度としての住宅政策という視点が欠けていたのだ。

 

持ち家政策は政界と財界の癒着を象徴するものだといえる。

政府は住宅ローンを組んで持ち家を所有することを国民に推奨する。

住宅会社や不動産業者も自分の家を持つことを煽る。銀行をはじめとする金融機関は有料顧客である住宅ローンの貸し出しが増える。政治家は土地の開発許認可の斡旋をし、票やマージンを手にする。これら政財界面々の私益のために(私腹を肥やすために)公共財である土地が食い物にされたのだ。

 

僕たちが安心して暮らすためには最低限「衣・食・住」が充足されていなければならない。

住宅の確保が不安定な状況だと、生活の基盤が脆弱になる。現に派遣社員をはじめとする所得の低い労働者は仕事が途絶えると住む所を失うケースが多くあり、一気に生活が破綻する。

仕事を失っても住居さえ確保しておけば再就職活動もできるし、何より路頭に迷わなくても済むのだ。そのための受け皿として公営住宅や労働者住宅が必要なのである。

また、低中所得者が安定した生活を営むためにも良質な公営住宅や労働者住宅は欠かせない。以前のエントリでもふれたように、低中所得者が苦しい生活を強いられるのは住宅費が高いからである。良質で安価な住宅が必要なだけ供給されれば、多くの人たちの生活が豊かになり、内需も拡大する。

 

日本の住宅ローンに潜む問題もある。

他の国では「ノンリコース・ローン」が主流なのに日本ではそうなっていない。ノンリコース・ローンとは、仮にローンが払えなくなっても物件を差し出せばローンがチャラになる仕組みだ。これならば生活の再建をしやすい。

日本ではローンを払えなくなって物件を差し出しても、大方その物件は担保価値より低い価値しかなく、ローンと売却価格を差し引いた額の借金は残るという仕組みになっている。家を失った上に借金が残るという悲惨な事態に陥るわけだ。

 

話は逸れるが、日本の銀行は上述の住宅ローンといい、連帯保証人制度といい、利用者に多大な負担を強いている。なのに、多くの銀行が一時期破綻寸前の状態まで追い詰められた。よほど無能な人間の集まりだったのだろう。

 

話題を戻して。

 

長期のローンを組んでまでマイホームを買う行為は、今の時代リスクが大きすぎると思う。

長期の安定的な雇用が保障されている人たちはほんの一握りである。それらの人たちも病気やリストラ等で仕事を失う可能性もある。

戦前のように家を買うときは一括払いできるまでお金を貯めてからにするか、あるいは頭金を多く用意できるまで我慢して、短期間のローンにするかいずれかの方法によるしかないような気がする。ただし、多額の遺産相続でもあれば別だが。

 

住宅政策は重要な社会保障である。

土地(あるいは時には建物も)は公共財の性質を強く持つものである。

不動産取引を市場原理に全面的に委ねる政策は改めるべきだと強く思う。

持ち家政策で一部の業界だけの懐を潤すような愚行を繰り返すべきではない。