希望の舎―キボウノイエ―

漂泊を続ける民が綴るブログ。ちょっとナナメからの視点で語ります。これからの働き方・中世史・昭和前期の軍の組織論・労働問題・貧困問題・教育問題などに興味があるので、それらの話題が中心になります。

なぜ介護に従事する人たちの待遇が悪く、虐待が起きるのかという件

施設における高齢者や障害者に対する虐待のケースが絶えない。

 

虐待が起きる理由は様々だが、主な要因としては介護職員の労働条件が悪いことと、介護業界が抱える構造的な問題がある。

 

福祉・介護業界の賃金が低いことは有名だ。それに施設によっては夜勤があり、早出・遅出もあり、勤務時間が不規則である。しかも人手不足のために日勤・遅出、日勤・夜勤など連続勤務を強いられる施設も多い。

劣悪な労働条件のために介護職員はストレスが溜まり、そのはけ口として利用者を虐待してしまう、とよく言われている。

これは一面においては正しい見方である。

劣悪な待遇を強いる経営者が悪いと、経営者を責めることは容易い。

しかしながら、この類の主張だけでは問題の本質を見誤ってしまう。

 

介護施設の収入源は大部分が介護保険による介護報酬である。介護報酬には上限がある(しかも高くはない)。施設では定員が決められているので、収入の上限も決まっている。利益を出そうとすれば介護職員の人件費を削るしか方法はない。要介護度が高い利用者(ケアを要する人)を多く受け入れて、人員は最低限に抑えると儲けが出る構造なのだ。

介護職員にとってみれば、ケアを要する利用者が増えても給料は増えないし、労働時間が増えることもある。しかも労働強化になる。

仮に、利用者のケアを充実させて、かつ介護職員の待遇を良くするという良心的な経営をすると、その施設はたちまち赤字になり、事業の継続が困難になる。

 

つまり、介護報酬を削り安上がりにしたい政府の思惑と、儲けを独り占めしたい経営者たちが跋扈することによって、介護業界の待遇が悪いままになっているのだ。

待遇が悪いと、従事する労働者の質が劣化する可能性が高くなる。そうすると、利用者の虐待が起きるケースも出てくる。

虐待をするのはほんの一握りの介護職員であり、殆どの職員は悪い待遇の下で真面目に働いている。しかし、介護職員個人の頑張りや献身的態度に頼っていては、いつの日か破綻するだろう。「やりがいの搾取」を続けていては未来がない。

 

現行の介護保険制度では、要介護度によって一律に介護報酬が決められている(一部デイサービスで例外はあるが)。

つまり利用者に手厚いケアをしている施設と人員を押さえ手抜きのケアをしている施設も報酬は変わらない。3,4年前に介護職員の処遇を改善する手当が創設されたが、この手当を従業員に払わない経営者もいる。

やはり、ケアを手厚くする施設には報酬を増額し、手抜き施設には減額するというシステムを導入する必要があると思う。

すなわち、法定人員より多く介護職員を配置している施設には報酬を上乗せして払う制度である。介護職員の給料を少し上げるよりも、人員を増やし仕事に余裕をもたせる方が職場環境が良くなると思うからだ。

このシステムを採用すれば必ず不正受給を図る経営者も出てくるだろう。それには抜き打ち監査をする(今は事前に通知して監査する)などの手段で対抗するほかない。

 

僕も介護職の経験があるが、なかなかに面白くて奥の深い仕事だ。

高齢社会の担い手を失ってはならない。